Season 2 第1講
「メディアと市場のAIDA」始動
2021.10.16
それに応じるように、7名のボードメンバーが「メディア」「市場」そしてその「あいだ」をめぐる問題に切り込んでいった。
これらの論点を携えて、31名の座衆(ざしゅう)の「メディアと市場のAIDA」をめぐる半年が始まった。
●課題図書
『情報の歴史21』
『資本主義問題』松岡正剛(千夜千冊エディション/角川ソフィア文庫)
●プログラム
13:00〜 オープニング フラッグメッセージ
14:00〜 松岡正剛座長講義
15:10〜 ボード「見方」セッション(座衆・ボード全員参加)
17:45〜 AIDAセッション(座衆・ボード全員参加)
シーズン2 第1講フォトレポート
オープニングフラッグメッセージ
オープニングの「フラッグメッセージ」では、[AIDA]プロデューサーの安藤昭子からシーズン2の方向性が示された。「メディアと市場のAIDAというテーマは、身近であるだけに難しい。前提条件をアンラーニングする必要がある。この場に集われた7名のボードメンバーは、アンラーンの達人ばかり。換骨奪胎して新しい目で時代を捉え直す、その技能や方法や情熱や鍛錬の程に接し、大いに触発されてほしい」。
今期通しての課題図書は、松岡座長の『資本主義問題』(千夜千冊エディション/角川ソフィア文庫)と編集工学研究所の『情報の歴史21』。スラヴォイ・ジジェクの『事件!』もキーブックだ。
松岡正剛座長講義
文明において情報の相互作用化を媒介してきた「メディア」、会計や相場のメディアとして生まれいつしか文明を飲み込んだ「市場」、それぞれの来歴を語りながら、いま向かうべき問題の諸相を解いていく松岡座長。その手がかりとして、次の5つのキーワードが手渡されたーー「トークン」「システム」「電子」「小さな経済」「資源としての想像力」。
→第1講 松岡正剛座長講義ダイジェスト はこちらでご覧でいただけます。
松岡座長がしたためた書。今期のテーマとなる「伝(メディア)」と「市場(マーケット)」に、自作の句が添えられた。
「伝ふるも傳えらしむるも風前記」
「折々の市を織りこむ値声かな
ボード「見方」セッション
「メディアと市場のAIDA」をどう見るか。ボードメンバーがそれぞれの「見方」を持ち寄るこのセッションでは、七人七様の視点が交差した。
江戸における「メディアと市場」の関係を紐解く田中氏。「江戸時代には悪所(あくしょ)の経済というものがあった。遊郭や芝居小屋、また茶屋が采配する経済には定価がない。こうした表からは見えないお金の動きがあるところに数々の印刷物が生まれ、、浮世絵をはじめメディアのイノベーションが次々と起こった」。
「いま『資本主義』という言葉をめぐって、相反する2つの感覚があると思う。1つは資本主義は永遠のシステムで絶対終わらないという感覚。他方で資本主義という船は沈没するんじゃないかという感覚」。大澤氏は相対する見方を引き、「もっと大きな想像力を」と座衆に揺さぶりをかける。
否定神学的にむしろ“外部”に目を向けるべきと言う佐藤氏。「ここでは基本的にユダヤ・キリスト教文明のコード体系で話をしているが、その外部に対して思いを馳せる必要がある。たとえば、国家。経済合理性とは違う基準を持つ国家システムと資本主義システムの間をどう見るのか」。
「日本のインターネットの父」と言われる村井氏は、人類におけるインターネットのリスクと希望を説く。「インターネットはTCP/IPですべてがつながるグローバルな空間を人類に提供してしまった。いまや地球を覆う光の速度は人間の脳の認知スピードより速い。このインターネットの“やっちゃった問題”とも言えるグローバルネットワークをどう扱っていくのか。あらゆる角度から考える必要がある」。
AIDAセッション
座衆からの疑問や感想にボードメンバーや座長が応じる、この日最後のセッション。メディア、市場、その間をめぐって、多様な論点が交わされた。松岡座長は「今足元にある資本主義社会に、いかに想像力を差し込んでいくことができるか。このことを、ぜひこのプラットフォームで考えてみていただきたい。」と締め括った。