Season 1   第1講

ヤバい日本、ヤバい文明

2020.10.17

 20204月、15年続いた企業人のための次世代リーダー育成塾「ハイパーコーポレートユニバーシティ[AIDA]」が一旦の役割を終えた。多様な知と刺激を受け取る「ユニバーシティ」から、新たな知を創発する「プラットフォーム」へ。大きく舵を切った新生Hyper-Editing PlatformAIDA]は、松岡正剛座長と9名のボードメンバー、そして30名の座衆(参加企業人)による喧々諤々のセッションで幕を開けた。

 シーズン1のテーマは「生命と文明のAIDA」。新型コロナウイルスの猛威が世界を覆った2020年、生命は危機にさらされ、文明は自らを省みようとしていた。生命はいかにして文明をつくりだし、文明はどのように生命を運んできたのか。その「あいだ」を我々はどう見ればいいのか。プラットフォームのもうひとつのテーマである「編集的社会像」の構想を目指し、まずは日本の現状に立ち戻るところから、大きな行く末を描いていく。

 

講義風景

【シーズン1ボードメンバー】

座長:松岡正剛(編集工学者)
いとうせいこう(小説家・作詞家・ラッパー・俳優)
岩井克人(経済学者)
大澤真幸(社会学者)
佐倉 統(科学技術社会論研究者)
田中優子(法政大学名誉教授、江戸文化研究者)
中村 昇(哲学研究者)
山本貴光(文筆家・ゲーム作家)
鈴木康代(イシス編集学校)

【プログラム】

13:00〜 オープニング
13:45〜 松岡正剛 導入講義「生命と文明の間」
15:00〜 座衆セッション
16:50〜 編集工学レクチャー
18:00〜 AIDAセッション(全員参加)「詰まされている世界と小さきもののアナロジー」

講義の本棚「ヤバイ日本を“即”編集する1冊」

ライブセッションで交わされた議論から、より思索を深めるための参考書籍を、運営チームがピックアップ。第1回目はシーズン1を通しての課題図書でもある、松岡正剛座長の著作『文明の奥と底』(千夜千冊エディション/角川ソフィア文庫)だ。

 松岡座長は、第1講の導入講義を「日本は深刻にヤバイ状況にある」と語り始めた。このヤバイ日本では、制度疲労、人材払底、構造流動、思想固陋が著しい。なぜかといえば、コンプライアンスによる危機管理が思想を摩滅させたからだ。結果、誰もが評判ばかりを気にして平均へ向かい、面白いことが起こらない社会ができ上がってしまった。

 座長は、そうした現状に対して「際(キワ)」の思想を提案する。さまざまなキワ=ボーダーを平均化せず、キワの矛盾や個別化や復号化を重視する方法だ。とくに向かうべきはきわどく微妙なキワ、たとえば志野と備前のキワ、ヒップホップとロックのキワ、シャンソンとフォルクローレのキワだ。際の思想に向かうために、もっと早いエディティング、すなわち「即」の編集に着手したい、と座長は呼びかけた。「今のヤバイ状態のまま、このヤバイ文明を語ってみたい」というのだ。この講義から、半年間のAIDAシーズン1が幕を開いた。

 

第2講 ウイルスと文明のあいだを考える ▶︎

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